憲法違反でも有効?議員定数訴訟

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憲法違反でも有効?議員定数訴訟

裁判のニュースのなかで、おそらく一番理解しにくいのは議員定数訴訟ではないでしょうか。

 

憲法では法の下の平等原則が定められていますから、選挙権についても一人一票の原則がとられています。しかし、議員一人に対する有権者数が選挙区によって違うため、実質的には一人一票の原則が崩れています。

 

たとえば、10万人の中から一人の議員を選ぶ場合と、1万人の中から1人の議員を選ぶ場合とでは、1票の重みがまったく違ってきます。

 

 

そこで、こうした一票の重みの違いが法の下の平等原則に違反するのではないかが争点となって、多数の裁判がおこされているわけです。

 

 

少々古くなりますが、昭和51年に、最高裁判所はこの問題について画期的な違憲判決を下しました。この裁判は、昭和47年に行われた衆議院議員選挙において、千葉県第一区の選挙人たちが、1票の較差が最大1対4.99に及んでいるのは憲法違反であるとして、選挙の無効の訴えをおこしたものです。

 

最高裁判所は、そのような較差があることは憲法違反であると判断しました。

 

しかし、それと同時に、憲法違反だからといって選挙を無効にすると混乱が生じることを考慮して、選挙自体は有効であるとしました。こうした判決を事情判決といいます。

 

たしかに、選挙自体を無効とすれば、その選挙で選出された国会議員は議員の資格を失うことになってしまい、わが国の政治・行政が大混乱に陥ってしまうでしょうから、裁判官が苦しい判断をしたのも理解できないわけではありません。

 

 

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その後も、多数の議員定数訴訟において最高裁判所は憲法判断を行ってきました。これまでの判決を総合すると、裁判所は、衆議院では1対3までの較差であれば憲法上許容されるのに対し、参議院ではそれ以上の較差があっても憲法上許容されると考えているようです。

 

衆議院と参議院とで基準が違うのは、衆議院とは異なる独自性を参議院にもたせるために、議員の選出方法に工夫が施されていることが考慮されているためです。

 

それゆえ、参議院においては、1対5.85の較差があっても合憲であるとの判決がなされたほどです。もっとも、1対5.85の較差が争われた裁判では、たとえ参議院であってもそこまで不平等であれば違憲になると判断されました。ただ、この判決でも、選挙そのものは有効とされました。

 

 

このような裁判所の態度に対しては、学者から厳しい批判が出ています。憲法の理念からすれば、やはり誰しも同じ一票の価値をもつべきですから、裁判所の基準は緩やか過ぎると思われます。

 

裁判所が毅然とした判断を下さないから国会議員は積極的に選挙方法を改善しようとしなかったのではないでしょうか。

 

近時、ようやく国会は、国民の政治不信を背景にした政治改革の名の下に、小選挙区制度の導入という抜本的な改正を実施しましたが、この制度にもいくつもの欠陥があり、まだまだ改善すべき点が残されています。

 

諸外国では一票の価値の平等があたりまえであるとされている現在、わが国の裁判所は国会に遠慮をしすぎているといえます。

 

 

自由民主党による事実上の一党支配が崩壊して以来、政治的価値観が流動化している状況下ではなおさらです。国会議員の重い腰を上げさせ、真に公正な選挙制度を確立するためには、裁判所が従来の選挙制度の欠陥に対して厳しい判断をすることが必要です。

 

たくさんの議員定数訴訟が提起されているのは、こうした願いが込められているのです。

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