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少年の人権保護の必要性

成人とは異なる取り扱い

少年は、犯罪をおかした場合であっても、その少年の健全な育成を期するために、成人の場合とはいくつかの点で異なった取り扱いがなされています。

 

少年の被疑者は、やむをえない場合でなければ勾留することができません。勾留を必要とする場合でも、監獄ではなく少年鑑別所に拘禁することになります。

 

また、少年の被疑者・被告人は、できるだけ他の被疑者や被告人と分離して、その接触をさけなければならないとされています。

 

 

成人の刑事事件では、通常、警察の捜査が終わると事件が検察官に送致されますが、少年の場合には、罰金以下の刑にあたる事件では刑事処分に付されることがありませんので、その事件は警察から検察官を経由せずに直接に家庭裁判所に送致されることになります。

 

 

検察官も、犯罪の嫌疑のある少年を家庭裁判所に送致しますから、結局、犯罪をおかしたとみられる少年はすべて家庭裁判所に送られることになるわけです。

 

その後、家庭裁判所から検察官に逆送された場合にのみ、検察官は少年を被告人として起訴することになります。

 

少年に対する刑事事件の審理は、保護事件における調査と同じように、少年、保護者、関係人の行状、経歴、素質、環境について、医学・心理学・教育学・社会学その他の専門的知識を活用して行うように努めなければならないとされています。

 

 

少年に対する刑は緩和されており、刑罰を科す場合には、犯罪をおかしたときに18歳未満の者に対しては、死刑とされるべき場合には無期懲役または禁錮とし、無期刑とされるべき場合には10年以上15年以下の懲役または禁錮としなければなりません。

 

 

また、一定の場合には不定期刑が言い渡されます。審理の結果、刑罰ではなく保護処分に付すのが相当であると考えられるときは、事件を家庭裁判所に移送します。

 

刑の執行においても、少年は成人と分離しなければならず、このために少年刑務所が設けられています。

 

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検察官がいない

ところで、通常の刑事事件では検察官が重要な役割を果たしていますが、少年審判手続きでは検察官がいません。

 

非行事実の認定に関する証拠調べの進め方についても、広く裁判官の裁量にゆだねられています。

 

通常の刑事裁判では、たとえば伝聞証拠を排除するなど、誤った判断をしないようにするための決めごとがありますが、少年審判手続きにはこうしたチェック手続きもありません。

 

その意味では、成人の刑事事件よりも一層慎重に審理する必要があるといえます。

 

 

 

捜査における人権の尊重

このような必要性を強く意識させられるのは、少年事件の捜査の過程において、少年の人権を無視したような取調べが行われた事例が少なくなかったからです。ここで、綾瀬母子殺し事件を紹介しましよう。

 

昭和63年11月16日午後2時ころ、東京都足立区綾瀬のマンションで母親と長男が絞殺されるという事件が発生しました。そして、事件発生から5か月以上も経過した平成元年4月24日になって、突然A、Bの二人の少年が綾瀬署への任意出頭を求められ取調べを受け、翌日には少年Cも取調べを受けました。

 

 

そのときの取調べは、少年の人権を無視したひどいものでした。警察官は、厳しく質問しながら、ものさしでA少年の頭をたたいたり、耳元で怒鳴ったり、机を蹴ったりし、「おまえ、いつまで突っ張っているんだ」とA少年の襟をつかんで押したり引いたりし、さらに顔を殴ったり、髪をつかんで頭をガンガンと壁にぶつけました。こうした取調べに耐えきれず、A少年は虚偽の自白をしてしまいました。

 

 

B少年とC少年についての取調べも少年の人権を無視したもので、結局、三人の少年は逮捕されてしまいました。

 

その後A少年は、知らない事実を追及される苦痛と恐怖から、ズボンのチャックで左手首を削って自殺をはかったほどです。

 

この事件について東京家庭裁判所は、三人の少年に対して、非行事実なしとして不処分の決定をしました。これは成人の刑事事件における無罪判決に相当するものです。

 

このような人権侵害事例は、報告されているだけでもかなりの数になります。したがって、表面化していない事例は、相当の件数になるものと推測されます。

 

こうした不幸な出来事を生じさせないためには、実際に捜査にあたっている警察官が少年の人権を尊重する意識をもつことが何よりも必要です。また、弁護士および弁護士会の果たすべき役割も小さくありません。

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